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地球にある灰猫手紙舎
はるか遠く
銀の星の猫たちから
手紙が届く場所
この星のどこかで
いつからか
人は小さな奇跡を
見失ってしまった
けれど
遠い銀の星では
猫たちが言葉にならない美しさを
ひとひら ひとひら
すくいあげている
ひかる朝の霧
誰にも名付けられない花
消えかけた想いのひだ
猫たちから預かった封筒には
額に星が飛び交い
胸の石に風を吹き込むものが
無造作に慈しみ詰められている
喜び 悲しみ 時には苦しみ
そんな瞬間の中でも
猫たちは万華鏡の瞳で言葉を編む
預かったそれを手紙に仕立て
そっと置いておく
それは忘れかけた小さな呼びかけ
灰猫手紙舎
それは静かな目覚まし時計
うすく開いた窓
星の記憶を繋ぐ小さな灯台
かの星の猫たちは
そのヒゲに震える何でもない
奇跡を拾い集めて
灰猫手紙舎へ預けに来る




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